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映画「塩狩峠」実際のモデル長野政雄氏~映画「塩狩峠」と「海嶺」の繋がりを発見!!~編 神の恵みとその裏話 ㉕

更新日:2023年6月1日

皆様からのご支援とお祈りのおかげで、HDリマスター化は、2022年10月末には完成いたしました。かなりきれいな映像になり、今日もどこかで誰かがブルーレイやDVDをご覧になっておられることと思います。

塩狩峠を上映していて、良く訊かれた質問があります。それは、「どこまでが実際の長野政雄さんの話ですか」です。

三浦綾子さんは、連載の前にこう言っています。「しかし、あらかじめ、はっきりお断り申し上げたいのは、長野政雄さんは、あくまで原型であって、この小説の主人公その人ではないということである」(三浦綾子 信仰と文学 日本キリスト教出版局)

三浦綾子さんご自身も、小説「塩狩峠」のあとがきに実際の長野政雄さんについて、詳しく書いておられます。


まず、長野政雄さんに婚約者はいたのかという点ですが、彼には婚約者はいなかったようです。ですが、ふじ子さんというモデルは、三浦綾子さんご自身でしょう。カリエスの彼女を、毎日見舞っていた友人の前川正さんから与えられた明日への希望、そして彼の死による悲しみの思いが、ふじ子さんという人物を作り上げていると思います。

また、同僚の給与を盗んでしまう不良青年三堀峰吉のモデルの一人は、ブルーレイの特典映像でも紹介している藤原栄吉さんではないでしょうか。彼は、「決断の時」という雑誌の中で告白しています。

「懐疑心の強い少年として育ったために、職業も長続きせず、諸所方々を食い詰めて流転していた」。彼はやっとのことで、国鉄職員になれて旭川出張所に引き取られます。その理由を旭川事務所長の跡田直一さんが、こう言っていたそうです。「僕のところには、年が若いがしっかりとした長野政雄という庶務主任の人格者がおるから、その不良青年は、僕がもらい受けて、きっと鍛え直してごらんにいれる」。

その通りに、長野さんの感化を受けキリスト者となり、三浦綾子さんに長野政雄さんのことを紹介したのも藤原栄吉さんでした。

映画「塩狩峠」より

また、映画をご覧になった方から、事故説と自殺説があることも聞きました。

長野政雄さんは事務職でしたので、ハンドブレーキの操作に慣れていなくて、操作ミスから殉職されたとの説です。

先ほどの藤原永吉さんは、「旭川六条教会六十五年史」に、「ハンドブレーキの反動により身体の重心を失いデッキの床上の氷に足を滑したのであろう、兄(けい)はもんどり打って線路上へ真逆様に転落し、そこへ乗りかかってきた客車の下敷きとなり、その為客車は完全に停止して乗客全員無事を得たるも兄(けい)は哀れ犠牲の死を遂げられた」と事故死の可能性を書いたそうです。

と同時に、藤原さんは三浦綾子さんに、長野さんが身を投じる寸前に、合図を送ったのを目撃した者があったとも語っていたようです。

どちらにせよ、藤原さんにとっては、犠牲の死の大きさに圧倒されたのでしょう。遺徳顕彰碑の建立を主唱されたのも、藤原栄吉さんでした。

長野政雄さんが事故時に持っていた 彼の血の付いた聖書

人一人が下敷きになったくらいで止まるスピードだったら、乗客も飛び降りれば良いとの感想もありました。しかし、実際に乗客は飛び降りなかったのですから、相当のスピードだったのでしょう。

覚悟の死であったのか、事故死であったのかはさておき、暴走した列車が、一人の人の犠牲の死によって止まり、多くの乗客が救われた事実に、神の奇跡を感じます。

実は長野政雄さんは、いつも「遺書」を携帯していました。それで自殺説が出たようです。その中に、「苦楽生死均しく感謝。余は感謝してすべてを神に捧ぐ。」があります。映画の冒頭でも、永野信夫が、「いつでも神のために死ねる人間であれ」と説教をしているシーンがあります。

 覚悟の死だ、いや事故死だとの論争を天から観ている長野政雄さんと三浦綾子さんは、きっと苦笑いされていることでしょう。神のために殉教し、多くの人々の命を救ったことに対して、主から義の栄冠が与えれたことは間違いありません。

 イエス・キリストも十字架にかかりましたが、これも、ある人とっては単なる処刑に過ぎず、別の人にとっては、身代わりの死なのと同じかもしれません。

 そして、この長野政雄さんの殉職後、多くの人が、キリスト者になったそうです。


坂本直寛牧師

また、その旭川での信仰の友は、幕末の偉人であった坂本竜馬の死によって心に痛手を負った甥の坂本直寛牧師でした。キリスト者となった彼は高知から北海道へ開拓民として渡り、刑務所伝道などをしていました。

 この坂本直寛牧師に伝道した宣教師の一人が、グイド・F・フルベッキ宣教師です。彼は少年の時に、三浦綾子原作小説・映画「海嶺」で、音吉たちと聖書を和訳したカール・ギュツラフ宣教師の東洋支援の講演をヨーロッパで聞いて、日本宣教に重荷を持ったのです。

映画「塩狩峠」と「海嶺」が繋がりました。


人が自分の友のためにいのちを捨てること、これよりも大きな愛はだれも持っていません。(ヨハネ 15:13)


参考文献

・塩狩峠(三浦綾子)新潮社

・塩狩峠、愛と死の記録(中嶋啓幸)フォレスト・ブックス

・三浦綾子 信仰と文学 日本キリスト教団出版局

・聖書を読んだサムライたち(守部喜雅) フォレスト・ブックス

・決断の時 ビリー・グラハム伝道協会

・音吉伝(篠田泰之)新葉館出版


*映画「塩狩峠」の上映については→https://www.chfilms.net/applicationform

*DVD、ブルーレイ「塩狩峠」については  

*三浦綾子ツアーに関しては→https://www.chfilms.net/tour



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