神の恵みとその裏話(54)第4回 三浦綾子の信仰と文学ゆかりの地を巡る心の旅 レポート― 幻の「浦上四番崩れ」と、北海道の痛みの中で見えた三浦綾子さんの使命と虹 ―
- Michio Isokawa

- 1 日前
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更新日:10 時間前

今年で 4 回目となる「三浦綾子の信仰と文学ゆかりの地を巡る心の旅(2026年6月25日~27日)」。毎年、旭川を中心に、三浦綾子さんの信仰と文学ゆかりの地を巡りながら、作品世界と信仰の根をたどってきましたが、今年の旅はこれまで以上に深い意味を持つものとなりました。その理由は、三浦綾子さんが最後に書きたかった幻の小説が『浦上四番崩れ』であったという新しい発見と、そして旭川という街が抱える “痛み” に向き合う機会が与えられたからです。

今年は、これまでチャプレン兼ガイドを務めてこられた込堂一博先生が病気療養のため辞退され、代わって、三浦綾子読書会代表・森下辰衛先生のご紹介により、宮本道宣先生が急きょピンチヒッターとして務めてくださいました。突然の依頼にもかかわらず快く引き受けてくださり、その穏やかで深い語りは、参加者からも「心に残った」「祈りが旅全体を包んでいた」と高い評価が寄せられました。
私はこのツアーの資料を毎回手作りしてきましたが、4回目の今回、資料を作る過程で初めて知ったのが、三浦綾子さんが晩年、「浦上四番崩れ」を最後のテーマとして描こうとしていたという事実でした。この発見は、私にとって旅全体の意味を大きく変えるものとなりました。

初日の巡りは、大変恵まれたものとなりました。 最初に訪れた三浦綾子記念文学館では、展示物はこれまでと同じはずなのに、心に響く深さが違っていました。綾子さんが長い闘病の中で信仰に導かれ、やがて『氷点』で作家として立ち上がったことはよく知られています。しかし、晩年に「迫害と殉教」という重いテーマに向き合おうとしていたことを知った今、展示されている原稿や愛用品が、まるで別の物語を語り始めているように感じられました。

また、三浦綾子ご夫妻が住んでいた場所を訪ねると、昨年は更地になっていましたが、現在はお菓子屋さんの建設が進んでいました。いつか綾子さんの名前が付いたケーキやクッキーが発売されたら、ファンにとっても素敵な巡りの楽しみになるだろうと、期待が膨らみます。
層雲峡では、柱状節理の断崖が続く雄大な景観を眺めながら、綾子さんと光世さんが新婚旅行でこの地を訪れ、作品の舞台として繰り返し描いた理由を思いました。4度目の訪問であっても、綾子さんの思いは、目の前の景色によっていっそう深い意味を帯びて感じられました。
2日目の巡りは、当初雨の予報でしたが、不思議と天候に守られ、予定通り進めることができました。 最初に訪れた銀河・流星の滝では、三浦綾子さんが、「積木の箱」で、「ウエディングドレスのよう」と表現したような、美しさを体感しました。

その後、塩狩峠を訪れ、長野政雄の聖書を見せていただきました。自己犠牲の愛を生きた青年の実像に触れるたび、綾子さんが『塩狩峠』に込めた祈りの深さに胸を打たれます。
今回、恵みの出会いがありました。塩狩峠記念館となっている旧三浦綾子宅に、旭川めぐみ教会の牧師として住んでいたことがあるヘイマン宣教師の息子のジョンさんが、たまたまオーストラリアから奥様を伴って帰省されていたのです。子供の頃に三浦綾子ご夫妻に可愛がられたというお話を直接伺うことができ、一同驚きと喜びに包まれました。

続いて立ち寄った十勝岳爆発記念碑では、なんとテレビ番組『ブラタモリ』でも案内を務められたガイドの方がその場におられ、詳しく解説してくださいました。これはまさに神さまからのプレゼントです。
こうした体験を重ねる中で、長野政雄の『塩狩峠』の物語、『泥流地帯』の物語が、「浦上四番崩れ」の殉教者たちの姿へと重なって見えてきました。綾子さんが最後に描こうとしたテーマは、決して偶然ではなかったのだと気づかされたのです。

最終日は、信仰と文学の原点を巡る行程となりました。 最初に訪れたのは、綾子さんと光世さんが結婚式を挙げ、長く礼拝を守った旭川六条教会です。受付に飾られた綾子さんの自筆「愛は人の徳を建つ」を見つめていると、彼女の文学が単なる物語ではなく、信仰の証しそのものであったことを改めて思わされました。続いて信仰の出発点である春光台へ、心を静めて訪問しました。
ここでは、「道ありき」に出て来る、前川正さんが綾子さんを信仰に導けない自分のふがいなさを恥じて、ご自分の足を小石で打つシーンを、参加者のご夫妻に演じていただきました。お二人の真心のこもった演技に、当時の情景がふっと目の前に立ち上がるようでした。

そして例年と同じく、旭山動物園も訪れました。行動展示で全国的に知られるこの動物園ですが、この動物園の事件を始め旭川という町は近年、痛ましい事件など深い傷みを経験してきました。市民の心に影が落ちた時期もありましたが、それでも多くの人が動物園を訪れ、「命と向き合う場所」として支え続けています。園内を歩きながら、私は「命をどう受け止めるか」という問いが、三浦綾子さんの文学と同じ根を持っていることに気づかされました。

こんな時期に北海道を、そして旭川を三浦綾子さんゆかりの地として巡ることには、特別な意味があります。『塩狩峠』が語る “他者のために命を投げ出す愛”。『泥流地帯』が語る “まじめに生きる者が報われない痛みの中でも、なお誠実に生きる尊さ”。北海道の、そして旭川の痛みのただ中で、三浦綾子さんの文学は、いっそう切実に響きます。むしろ今だからこそ、綾子さんが語り続けた「命の尊さ」「誠実に生きること」「弱さの中に働くキリストの愛」を、この地に、日本に届ける使命があるのではないでしょうか。
巡りの終わりには旭川空港へ向かい、台風の影響が心配されましたが、飛行機は大きく揺れることもなく無事に羽田へ到着。降り立った空には、美しい虹がまるで旅の完了を祝うかのようにかかっていました。
三浦綾子さんが最後に描こうとした『浦上四番崩れ』は、綾子さんが私たちに託した “未完の祈り” そのものです。このテーマは、「長崎・五島・外海黙想の旅」、「乙女峠と 萩・津和野・山口黙想の旅」の重要な訪問地となっています。三浦綾子さんの代わりにその地を訪ね、ツアーを続けているのだと思うと胸が熱くなります。
その祈りを受け継ぎながら歩むこの「三浦綾子の信仰と文学ゆかりの地を巡る心の旅」は、これからも続いていきます。

人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない。
ヨハネ 15:13(口語訳)

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